『ぐらんぶる』のアニメ版で見られる強烈な「顔芸(変顔)」は、作画崩壊ではなく、原作の持つ狂気的なギャグの熱量を限界突破で再現した、極めて緻密でハイクオリティな演出の結晶です。
アニメーション制作会社で制作進行や広報として、数々の作画の修羅場や演出の意図を間近で見てきた私にとって、この作品の画面から溢れ出る熱量は「事件」そのものでした。
単なる綺麗なアニメでは終わらせない、作り手の凄まじい執念が込められた『ぐらんぶる』の顔芸シーンの魅力と、その背景にある高度なアニメーション技法について、元制作陣としての視点と溢れんばかりの愛を込めて徹底解剖します。
アニメ『ぐらんぶる』の顔芸・変顔は作画崩壊?演出の意図を徹底解説
アニメ『ぐらんぶる』を語る上で絶対に外せないのが、画面を埋め尽くすキャラクターたちの凄まじい変顔です。
あまりの変貌ぶりに「作画崩壊しているのでは?」と驚く視聴者も少なくありませんが、これは意図的に計算し尽くされた高度なギャグ演出です。
なぜ作画崩壊と言われるのか?
本作は、井上堅二先生原作・吉岡公威先生作画による大人気コミックが原作で、全世界累計部数は1000万部を突破しています。
青年漫画誌『good!アフタヌーン』での連載当初から、その過激なダイビングサークルのノリと、劇画調に歪むキャラクターの表情が大きな話題を呼んでいました。
普段は端正な顔立ちのキャラクターたちが、突如として人間離れした異形の表情に変わるため、初見の視聴者が「作画が乱れた」と錯覚してしまうのが大きな要因です。
計算し尽くされた演出の意図
2018年に放送されたTVアニメSeason 1(全12話)では、監督・脚本・音響監督をギャグアニメの巨匠・高松信司氏が務めました。
さらにキャラクターデザイン・総作画監督の草間英興氏ら実力派スタッフの手によって、原作の「狂気」が見事に映像化されました。
主人公・北原伊織(声 – 内田雄馬)や、金髪イケメンオタクの今村耕平(声 – 木村良平)が、サークル「Wait a Boo」ではなく「臨海ダイビングサークル Peek a Boo(ピーカブー、通称PaB)」の過激な飲み会や大学生活の中で、凄まじい顔芸を披露します。
これは通常パートとの「情報のギャップ」を作り出すために、圧倒的な描き込み量をもって表現されているファンサービスであり、演出の勝利と言えます。
北原伊織と今村耕平の「狂気」が生み出す顔芸名シーン
本作の顔芸のツートップといえば、間違いなく北原伊織と今村耕平の2人です。
男子校出身で薔薇色のキャンパスライフを夢見ていた伊織は、叔父の古手川登志夫が営むダイビングショップ「グランブルー」に下宿したことから運命が一変します。
屈強な先輩である時田信治(声 – 安元洋貴)や寿竜次郎(声 – 小西克幸)に強引に勧誘され、パンツ一丁でアルコール度数96%の「スピリタス」やウォッカを煽る日々に身を投じることになります。
伊織が耕平を騙してサークルに入会させてからは、この2人の悪友関係が生み出す顔芸の掛け合いがさらに加速しました。
特に印象的なのは、お互いの利益や女性関係が絡んだ瞬間の変貌ぶりです。
たとえばSeason 1の第3話や第4話で見せた、イケメンであるはずの耕平が、大ファンである声優・水樹カヤのことになると妄想を爆発させて顔を歪ませるシーンは強烈でした。
また、伊織が下衆な言動で周囲を巻き込む際に見せる、ギザギザの歯と影で覆われた悪魔のような表情は破壊力抜群です。
大学の同級生である野島元(声 – 江口拓也)、山本真一郎(声 – 榎木淳弥)、御手洗優(声 – 花江夏樹)、藤原健太(声 – ロバート・ウォーターマン)らとの合コンや定期テストでの化かし合いでも、彼らの顔芸は冴え渡ります。
特にSeason 2の第5話で、御手洗の架空の浮気をでっち上げて公開処刑する際の、伊織たちの冷酷極まりない表情は、視聴者の腹筋を崩壊させるのに十分すぎる威力を放っていました。
美女たちが見せるギャップ萌え?冷徹な視線と絶叫の変顔
『ぐらんぶる』の顔芸は、何もむさくるしい男たちだけのものではありません。本作を彩る魅力的なヒロインたちもまた、強烈な表情のギャップを見せてくれます。
伊織の従兄妹であり、伊豆大学機械学科の同級生でもあるヒロイン・古手川千紗(声 – 安済知佳)は、「伊豆春祭」のミスコンで優勝するほどの美女です。
しかし、伊織がサークルで全裸になったり、下衆な行動を取ったりした瞬間、彼女の瞳からは光が消え、まるでゴミや虫けらを見るような冷徹極まりない「蔑みの表情」へと変貌します。
この冷たい視線もまた、一種の洗練された顔芸としてファンの間で絶大な人気を誇っています。
さらに、青海女子大からPaBに加入した吉原愛菜(声 – 阿澄佳奈)の変貌も見逃せません。
初登場時はケバい化粧と金髪ウィッグで「ケバ子」と呼ばれ、強烈なインパクトを残しました。
素顔は素朴で可愛い常識人なのですが、凄まじい酒乱のスイッチが入ると、男勝りの狂暴な表情で暴走します。
また、ダイビングショップの看板娘で千紗の姉である古手川奈々華(声 – 内田真礼)も、普段の聖母のような笑顔から、極度のシスコンが発動して伊織に殺意を向ける瞬間の「般若のごときオーラと表情」は恐怖そのものです。
同じくサークルメンバーで大人の色気を放つ浜岡梓(声 – 行成とあ)は、男たちの全裸のノリに完璧に適応しており、彼女自身は変顔をせずとも、男たちを手のひらで転がす際の不敵な笑みが、周囲の顔芸をさらに引き立てるスパイスとなっています。
制作スタジオの変遷と顔芸作画クオリティの継承
アニメ『ぐらんぶる』は、シリーズを重ねるごとに制作体制が進化していますが、その「顔芸スピリット」は完璧に受け継がれています。
各シーズンの制作体制と放送の歩みは以下の通りです。
- Season 1(2018年7月〜9月放送/全12話)
アニメーション制作:ゼロジー
毎日放送ほかにて放送。高松信司監督のもと、原作の持つテンションを忠実に再現し、伝説的な顔芸の数々を生み出しました。
- Season 2(2025年7月〜9月放送/全12話)
アニメーション制作:ゼロジー×リーベル
約6年ぶりの続編として、TOKYO MXほかにて放送。ゼロジーが新たにリーベルとタッグを組み、デジタル技術の進化を取り入れながら、作画の肉厚さをさらにパワーアップさせました。特に第8話の合宿回での顔芸の密度は凄まじいものでした。
- Season 3(2026年7月〜放送中)
アニメーション制作:ゼロジー×セイバーワークス
物語の舞台を初の海外である「パラオ」へと移し、ダイビングショップ“ドルフィン”の支店の手伝いを中心に展開。ゼロジーとセイバーワークスの共同制作により、美しい南国の海と、それに相反する全裸野郎どもの狂気的な変顔が圧倒的なスケールで描かれています。最新の第2話でもその勢いは健在です。
制作スタジオが変わっても、Season 1から一貫して高松信司氏が監督・脚本・音響監督を続投し、草間英興氏がキャラクターデザインを支えているため、作品の魂である「劇画調の顔芸」のクオリティは一切ブレていません。
むしろ、パラオの美しい大自然と、男たちの顔面の汚さ(褒め言葉)のコントラストが強まることで、ギャグのキレは年々増している印象を受けます。
元制作陣が語る『ぐらんぶる』の顔芸が「圧倒的な描き込み」である理由
アニメにおける「顔芸」や「変顔」は、一見すると作画の手を抜いているように思われるかもしれません。
しかし、元制作陣の視点から言わせていただくと、この『ぐらんぶる』の顔芸こそ、莫大なエネルギーと高い技術力を要する卓越した作画の領域にあります。
通常のアニメーションでは、キャラクターの顔のパーツの配置(目、鼻、口のバランス)は「設定資料」によって厳しく決められています。
作画監督は、そのバランスが崩れないように修正を入れるのが基本の仕事です。
しかし、『ぐらんぶる』の変顔は、そのキャラクターの骨格やパーツの限界を超えて、ダイナミックに歪ませる必要があります。
ただ崩すだけでは単なる「作画崩壊」になってしまいますが、本作では、影の付け方(タッチ線や千本線と呼ばれる劇画調の細かい斜線)や、瞳のハイライトの消し方、筋肉の歪ませ方が非常に緻密に計算されています。
これらは原画マンが圧倒的な描き込みを行い、総作画監督である草間英興氏や植田羊一氏らが、ギャグとしての「一番面白い歪み方」をコントロールしているからこそ成立するものです。
さらに本作の監督を務める高松信司氏は、かつて『銀魂』や『男子高校生の日常』といった伝説的なギャグアニメを手掛け、そこでも文字通り「画面が割れんばかりの顔芸演出」を確立してきた人物です。
『銀魂』などで培われた「絶妙な間と、キャラクターのプライドをドブに捨てるような表情の崩し方」という高松監督のノウハウが、本作ではゼロジーの「線の太さをあえて均一にせず、肉筆感を残す作画のクセ」と見事に融合しています。
劇中で行われる右代宮准教授(声 – 子安武人)による理不尽なシャルピー衝撃試験の実験シーンなど、シュールな場面でのキャラクターの動きと表情のシンクロ率は見事というほかありません。
作り手が楽しんで、かつ命を削って画面に線を描き込んでいる息遣いが、あの凄まじい顔芸の1コマ1コマからビンビンと伝わってくるのです。
まとめとアニメ版『ぐらんぶる』の今後の私見
『ぐらんぶる』アニメ版の顔芸・変顔は、作画の手抜きや崩壊などではなく、原作への深いリスペクトと、ギャグの爆発力を最大化するために計算し尽くされた「超高クオリティな演出」です。
北原伊織や今村耕平をはじめとするPaBのメンバーたちが、時にイケメンの仮面を脱ぎ捨てて見せる悪魔のような形相は、緻密な劇画タッチの描き込みと実力派声優陣の怪演によって、唯一無二のエンターテインメントへと昇華されています。
個人的な見解として、この作品の本質は「徹底的な自己開示と感情の解放」にあると考えています。
人は誰しも、日常の中で格好をつけたり、本音を隠したりして生きているものです。
しかし、PaBの男たちは服を脱ぎ捨て、顔を限界まで歪ませて、自らの欲望や感情を100%爆発させます。
その圧倒的な熱量とバカバカしさに触れるからこそ、私たちは画面の前で腹の底から笑い、日々のストレスや孤独から救われるのではないでしょうか。
現在放送中のSeason 3では、舞台をパラオへと移し、さらにスケールアップした美しい海の世界と、それに負けない破壊力の顔芸が展開されています。
「綺麗で本格的なダイビング描写」と「全裸の男たちの狂気」という究極のギャップを併せ持つこの唯一無二の作品が、今後どこまで私たちを笑わせ、熱狂させてくれるのか。
一人のファンとして、そして元制作の端くれとして、これからも全力で愛を注ぎ、見守り続けたいと思います。
よくある質問
Q. 『ぐらんぶる』のアニメの変顔は作画崩壊ではないのですか?
A. 結論から申し上げますと、作画崩壊ではありません。
通常シーンよりも圧倒的に多くの線(劇画調のタッチや細かい影)が意図的に描き込まれており、キャラクターの感情の爆発やギャグの面白さを極限まで高めるために計算された、非常にクオリティの高い演出です。
Q. アニメSeason 3はどこのスタジオが制作していますか?
A. Season 3のアニメーション制作は、「ゼロジー」と「セイバーワークス」が共同で担当しています。
Season 1から作品を支えるゼロジーの安定したギャグのテンポ感と、新たなスタジオの技術が融合し、パラオの美しい海と強烈な顔芸がハイクオリティに描かれています。
Q. 原作漫画の累計部数はどれくらいですか?
A. 井上堅二先生原作、吉岡公威先生作画による原作コミック『ぐらんぶる』の全世界累計部数は、1000万部を突破しています。
現在も多くのファンに愛され続けている大ヒット作品です。


